大倉尾根。塔ノ岳へのルートの一つ。通称「バカ尾根」。変化が乏しく、単調な登りがひたすら続く登山道が由来とのこと。しかし、塔ノ岳までは標高差は1,200mもある、なかなかヘビーな登山道である。この単調でキツイ山に数多くのハイカーが訪れる。
確かに首都圏から日帰りで登山をするには交通の便(小田急線渋沢駅より、大倉行きバス「大倉バス停」)などを考えると身近な存在であることはわかるが、単純に何故なんだろう?という疑問が沸き起こりました。
とにかく行ってみなくてはその「バカ尾根」も、その「魅力」もわからないということで、次の休みには塔ノ岳を登ることにしました。
塔ノ岳は鍋割山、丹沢山、蛭ヶ岳などがつらなる丹沢山地に位置する標高1,491m(大倉より標高差1,200m)の山とのこと。標準コースタイムが登り3時間30分、下り2時間20分。ふんふん、なるほど、標高差1,200mを3時間30分! おいおい、みんなそんなペースで登れるのか?と少し弱気になります。
《07:45》大倉バス停
朝7:20に大倉バス停到着。午前中は快晴、午後から雲が出てくるという予報。すでに大勢の登山客が談笑しながら準備をしています。
出発前に荷物と地図のチェックを済ませ、バス停横にあるトイレに行く。手洗い場にはヤマビルの注意書きが。
大倉バス停のレストハウスの脇にあるポストに登山届を出していざ出発します。
緩やかな斜面に続く畑などを眺めながら田園風景を進みます。登山口までの道のりの途中にはソロキャンパー御用達の滝沢園キャンプ場がありました。よし、今度行ってみよう。
いよいよ登山道に到着。ここでもヤマビルの警告があります。
入り口から結構な登りです。平日はデスクワーク中心なので、慢性運動不足気味のこの体は、10分ほどですでに根を上げ始めました。
《08:10》観音茶屋
登山道入り口から歩き始めて15分。最初のポイント、観音茶屋に到着。ちょっとした休憩スペースとトイレがあります。まだ半分眠っているような体に無理やり叩き起こすように登って来てペースが乱れていたので、ここで一旦息を整えました。
《08:25》大倉高原テントサイト
観音茶屋を過ぎて、再び山道を進むと二股に分岐。少し遠回りになるがせっかくなので大観望方面へ進むことに。15分程度で大観望と隣接の大倉テントサイトに到着。ここは無料の野営地でソロキャンパーが数人おり、朝のひとときを過ごしていました。敷地にはきれいなトイレもありましたよ。テント泊で丹沢登山も楽しそうです。ただしこちらのサイトはコンロなどの火気は厳禁ということなので冬季は厳しそう。
このサイトからの視界が良かったです。まだ朝の大観望からの眺めは、遠くに相模湾が瑞々しい光の中輝いていました。
大観望の近くになにやら大きな杉の木があります。その杉は丹沢一太郎と名づけられており、50年後に高さが70mになり丹沢一の大杉になるという札がかかっていました。なんだかよくわからない札で色々と消化不良のままその杉を通り過ぎます。
その後、先ほど分岐された道は無事合流して、一本道が山頂まで続きます。
《08:35》見晴茶屋
山道にも段々と慣れて来た頃、次のポイントの見晴茶屋に到着。
ここでも休憩スペースとトイレがありました。見晴茶屋の名の通りデッキからは相模湾まで見渡せます。
宿泊客の方がいたのでここも素早く立ち去りました。
《09:20》駒止茶屋
見晴茶屋からひたすら登ると緑の建物が見えてきました。今回の行程の半分くらいに位置する駒止茶屋です。
《09:35》堀山の家
出発してからちょうど2時間弱で堀山の家に到着。平均ペースより同じか少し遅れている感じでしょうか。
この堀山の家を出ると登りの角度が一段階上がります。少しずつ岩や砂利が混ざり、木々も針葉樹から広葉樹に変化し始めました。
《10:30》花立山荘
花立山荘まで登って来たら山頂まであとひと踏ん張り。ここまで登ってくると周りの景色がガラリと変わりました。富士山がよく見えたのでベンチで携行食と水分を補給し、山頂までのラストスパートに備えます。
《11:15》塔ノ岳山頂
金冷しの道標の残り600mを見た瞬間、つい意識してしまいます。一歩を50cmと勝手に目算したカウントが始まりました。途中何度も数がわからくなったりしながらもずっと口ごもりを続けました。疲れ果てて、目はうつろ、足もヨレヨレのかなりあやしい姿です。
そして、永遠に続くのではないかと思っていた山頂直下の急階段の先がついに切れているのが見えました。
スタートしてから3時間30分。山頂は、いつもそうですが、突然現れます。その場所に立った瞬間、周りの景色が一変します。特に塔ノ岳山頂は360度の景色のパノラマが広がりました。大きく両手を広げると麓から吹き上げる風が心地よく体を冷やしてくれます。気持ち良すぎて思わず叫びたくなります。が、周りの迷惑になるので心の中だけで叫びます。「最高だー!」。
振り返ると大倉尾根ルートの塔ノ岳はたしかにまっすぐの登り坂の連続で体も気持ちも「しんどい」と思うことが多々ありました。しかし「バカ尾根」という不名誉な通称を受けるほどではないかと思います。よく整備された登山道は丹沢の自然を十分に堪能できるし、ポイント事に見える景色も楽しめます。
この山に数多くの登山者が訪れるのは、なによりも山頂の眺めや開放感が人々を魅了しているのではないでしょうか。すっかりこの山にハマってしまいそうです。
登る前に疑問に思っていたことが自分の中でなんとなく分かったような気がしました。
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